千田琢哉さんの「超一流は、なぜ、デスクがキレイなのか?」を読みました。
ビジネス書に近い自己啓発書であることは最初からわかっていたのですが、タイトルにひかれるものがあって手にとった本です……、が、さすがに主婦向きではありませんでした。
「超一流は、なぜ、デスクがキレイなのか?」はこんな本
作家としてデビューしてから、8年で112冊の本を出版したという千田さん。その圧倒的にハイスピードな仕事の秘密が本書には書かれています。
研ぎ澄まされた環境がパフォーマンスをアップさせるとする千田さんは、そのための整理術、片付け術、段取り術を、見出しも含めて1項目あたり4ページの少ないページ数の中でわかりやすく説明していきます。
本書で述べられているのは、あくまでも仕事の環境についてなのですが、家の中もきちんと整理したなら、日々の生活にゆとりが持てるんじゃないかと、まあ、そんな甘い期待で読み始めました。
想像以上の「超一流」向け本
近頃のビジネス書や自己啓発書には、ややオーバーとも思えるタイトルが付けられていることが多くなりました。
そのほうが話題性もあるし、書店で目にしたときに「おっ!」と視線を集めやすいという利点もあります。
どんどんタイトルがエスカレートして、時には本の中身とタイトルがあってないなぁ、と思うことも増えてきました。
なので「超一流は、なぜ、デスクがキレイなのか?」というタイトルを見た時も、
仕事のできる人になれるよう、仕事環境はきちんと整えよう。
的なことが書いてある本だとばかり思い込んでしまいました。
けれど、違いました。
タイトル通りの「超一流」(を目指す)向けの本でした。
想定読者を超一流を目指す人とすると、何が起こるか。
それ以外の人間は、けちょんけちょんにけなされます。
けなされた人達
オバサン
「ダサい人は、迷ったら黒を選ぶ」の項でやり玉に挙げられたのがオバサン。
森高千里の歌を聴き過ぎたのが、はたまたオバサンなら何を言っても痛くもかゆくもなかろうと思ったのか。著者の心のうちは知りませんが、おばさん街道ばく進中の私は見過ごすことができませんでした。
黒い服を選ぶダサい人として
『オバサンは汚れが目立たないように、黒い服装で身を固めているのだ。
オバサンの挑戦はせいぜい茶色までだ。
本人はそれが無難だと思っているかもしれないがひょんな光りの加減などで黒でも汚れているのが非常によくわかる瞬間がある。』
ん?
今引用をしてて気づいたのですが、著者は文章の切れ目(句点)がくるたびに改行をしているんですね。どうりでさくさく読み進められると思った。
という話はさておき。
オバサンって黒ばっかりですか?
著者の言うオバサンの定義がよくわかりませんが、黒を選ぶのはむしろ若い人のほうでしょう。歳をとってくるとですね、明るい色でないとヤバいのですよ。
顔がね、暗くなっちゃって。それでなくたって若い頃のようなきらびやかさがなくなって来ますから、洋服くらい明るめの色にして気分や雰囲気を盛り上げないと……って思うようになって来ます。
著者の言うオバサンは、おそらくはオシャレに関心のない地味なイメージの黒い洋服を着た女性……ってことなんでしょう。かなり雑な分類ではあります。
でも「超一流向け」の本だからいいのでしょう。
読者のイメージの中に、あぁそういえばダサいオバサンがよく黒着てるなぁ、という共感を呼び起こすことこそが大切なのですから。
若い新婚カップル
「二流マンションの最上階より、超一流マンションの下限の部屋がお得」の項で被害に遭ったのは若い新婚カップル。
『二流ホテルではせっかく高い宿泊料を支払っても、朝のビュッフェに寝癖をつけたままスリッパで登場する若い新婚カップルと遭遇するリスクがある。
もうそれだけで二流菌に感染してしまう。』
オバサンにだけ厳しいのかと思ったら、若い人にも厳しい著者でした。
今どきの新婚は30代、40代の人もいるでしょう。そうなればすでに一流の人もいるはずで、そういった方が不快に感じることがないようにするための配慮でしょうか。ここではあえて
若い新婚カップル
と「若い」が強調されています。
まあ、言わんとすることはわかりますが、デリカシーが感じられません。
ですが何度も言いますが、想定読者は「超一流」ですから仕方ありません。
最近の新婚は目に余る。よくぞ言ってくれたと思う人もいるでしょう。
三流の人
超一流の対比として本書内のあちらこちらに登場するのが「三流」の人。映画で言うなら助演男優(女優)賞ものです。
三流との人脈は断ち切るべしと繰り返し主張しています。
昨日この本を読んでいた友人が、翌日から既読スルーするようになったら、察して下さい。
「超一流」を目指す人しか読んではいけない
この本は、片付けをして仕事の効率をあげるための本ではありません。もしも本のタイトルが大げさなのだとすればそれは「超一流」のほうではなくて「デスクがキレイなのか?」のほうです。
断じて整理整頓の本ではありません。
「三流」との人脈をすべて裁ち切り、ダサい人は上から目線でさげすみ、一流ホテルや超高級マンションこそが自分の目指すべき場所だと思える人が読むべき本です。
そもそもが主婦向けの本でないことは百も承知です。
たとえるならば、絵本を読んだ大人が「この絵本は物語に深みがない」と言っているようなものかもしれません。
けれど、本当にすぐれた絵本は大人が読んでもそこから何かしら感じるものがあるはずです。
主婦のくせに自己啓発書とかビジネス書が好きで、今までにもちょいちょい読んできましたが、これほどまでに不快感を覚えたことは珍しいです。
不快ってことは、私自身が三流の証拠なのでしょう。
でもまあこの世の中、超一流ばかりであふれかえってしまったら大変なことになりますから、私には私の存在意義もきっとあることでしょう。
まっ、そんなわけで。
本書は「超一流」をめざそうとする人向けの本です。それ以外の方は、くれぐれもそれなりの覚悟をもって本書を手にされますように。